《小津安二郎について語る!日常がなによりも愛おしい!マンネリズムの帝王〜映画監督が語る映画監督名鑑No,1〜》

小津安二郎とはどんな映画監督か

ひとことで言えば、《同じような作品を繰り返し、作り続けた映画監督》です。

特に、会社員の中年男性を主人公に据え、その娘が嫁いでいく話が多いのが特徴です。(「麦秋」「晩春」「秋刀魚の味」)

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皆さんは、映画というと壮大なスペクタクルを想像するのではないでしょうか。そう、非日常性です。普段は起こらないような出来事(誘拐・ハイジャック・宇宙人の侵略など)が勃発して、それに対してのせめぎ合いでハラハラドキドキするアレです。非日常性は、確かに映画の醍醐味です。スカッとして、見ていて気持ちが良いからです。大きなスクリーンで見たいなぁと思うのは、そうした非日常性であることが多いのは事実です。

小津安二郎は非日常=アクシデントではなく、ともすると映画にはなりにくい「日常性」を主題として取り上げて、市井に生きる人々の日々のいとなみからドラマを作り上げていく職人的な映画監督でした。そこには小津安二郎ならではの映画に対する考え方、思考の哲学が存在します。

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⬛️小津安二郎の映画は楽しくない!?

小津安二郎の映画は、正直に白状すると《楽しくない》です。その理由は、動きのある展開がほとんどないからです。いろんな登場人物がやってきて、目の覚めるようなカメラワークがあって、伏線が回収されて、といった、映画にありそうなダイナミックな要素が、そもそもありません。

小津安二郎の映画では、固定された登場人物が、固定されたカメラアングルで、ポツリポツリと「そうか、、、」「そうなのか、、、」「そうなんだな、、、」と、なんとも言葉にならないビミョ〜なセリフを交わすのです。

意味深なセリフやカッコイイセリフも登場しません。つまり、そこに、映画としての快楽はないのです。それはそれは地味でパッとしない時間の連続です。楽しくないどころか、見るのが苦しくなるほど、ゆっくりしています。

楽しくないのなら、見る必要ないじゃんと思うかもしれませんが、小津安二郎の映画を見ると、楽しさとはまた別種の特別な感慨を抱くのです。それは、《面白さ》です。《美しさ》と言い換えても良いかもしれません。人間の面白さ、美しさが小津安二郎の映画の中には詰まっています。人が人と交わすどうでもいい会話や挨拶、ちょっとした仕草、言葉では表せない感情、毎日の生活におけるディテールなど、小津安二郎の映画は、人間の生活の中で見られる《面白いこと》で満ちているのです。

《楽しくはないのだけど、クセになる面白さがあるので、結果、楽しめちゃう》それが、小津安二郎の魅力だと思います。キューサイ青汁のキャッチコピーで《まずい!もう一杯!》というのがありますが、《楽しくないけど、面白い!》は私にとっての小津映画全般に対するキャッチコピーと言って良いと思います。

⬛️小津安二郎の見せたかったものとは

小津安二郎が見せたかったもの、思考の哲学とは、どういったものなのか。

それは、人間存在の本質を探求することだったのではないかと思います。

小津安二郎は人間の特徴をつかみ、それを一般化することで、見る者の記憶に少しでも残るように人間を描こう、捉えようと試みたと思うのです。多くの作品で主人公が会社勤め(サラリーマン)であること、家族の物語が主軸であること、娘が嫁いでいく話が多いことなどは、多くの人に共通する事柄であるからこそ、取り入れていると思います。そうしたとき、小津安二郎がなによりも大切にしているのが、何の変哲も無い「日常」であることは疑いようがありません。一見、退屈な日常、刺激のない毎日こそが、人間にとってなによりも愛おしいものであるというメッセージを映画全体から暗に伝えていると感じるのです。

⬛️小津安二郎を味わいたいならまずはコレ!

はじめて小津安二郎の映画を見るという人に、おすすめなのが「秋刀魚の味」です。1962年に制作されたカラー映画で、残念ながらこの作品が遺作となりました。それだけに、小津安二郎らしさが凝縮されています。

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まずタイトルが「秋刀魚の味」であるにも関わらず、秋刀魚が一度も登場しません。秋刀魚の味がどんな味か、本作を観た後に、色々感じてください。

⬛️小津安二郎が残した言葉

「僕は豆腐屋だから、豆腐しか作らない」

「どうでもいいことは流行に従い、重大なことは道徳に従い、芸術のことは自分に従う」

「男女の仲というのは、夕食を二人っきりで三度して、それでどうにかならなかったときはあきらめろ」

⬛️まとめ

小津安二郎は、映画制作を通して、人間が生きる上での《変わらない部分》(日々のいとなみ、繰り返す日常)と人間が生きる時代の《変わり続ける部分》(時代の変化、スピードのこと)を誰よりもストイック(偏執的)に追求した映画監督ではないかと思います。

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<筆者プロフィール>

石原 弘之(イシハラヒロユキ)

株式会社ポルトレにて、映画配信サービスORQUESTを運営。2012年「風待ち」にて第17回 調布ショートフィルム・コンペティション奨励賞。2016年「風媒花」にて商業映画デビュー。

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