東京国際映画祭2016でも話題となった!「ザ・ティーチャー」を観て、人間と歴史について考える。

第29回 東京国際映画祭(2016)にプレス参加した筆者は、11月1日にワールド・フォーカス部門にて上映された「ザ・ティーチャー」について今回、紹介したいと思います。

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<まずは簡単なあらすじから>

舞台は1980年代のチェコ。

脚本を手掛けたペトル・ヤルホフスキーの少年時代の実体験をもとに描かれているという。
主人公は共産党の支部長であり女教師としてロシア語とスロベキア語を教えている学校の先生。新学期に請け負った新しいクラスの生徒1人1人に自己紹介をさせ、更に両親の職業を教えるよう促していく。

生徒は素直に両親の職業や家庭環境について簡潔に語っていった。先生は子供の成績が悪いのを理由に生徒や生徒の親を呼び出して頼み事をするようになる。

だんだんとエスカレートする頼み事なのだが《先生は共産党の支部長である》ということでほとんどの家庭が先生の言いなりになってしまっていたのだ。
教師に、はむかう生徒や教師の要望に答えられない親を持つ生徒はどんなに努力しても著しく成績を悪く評価され、他の生徒とは明らかに扱いが違った。
そんな中、ある家族が悩みの末に転校手続きを学校側に出した事で校長先生が大変な事態を知る事となり、当事者である先生に内緒でクラスの生徒の両親たちを呼び欠席裁判を行う事となり…

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【まるで無邪気なモンスター!?】

主演はカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭にて主演女優賞を受賞したズザナ・マウレーリ。
個性的なパーマヘアと悪びれる事なく次々と汚職に手を染めてしまうのだが、どこか憎めないキャラクターを見事に演じきっている。

この先生、ちゃっかりしていて要領が良いったらありゃしない。自分の立場を利用して、うまく立ち回るのだ。それだけならただの職権濫用なのだが、天然なのか、計算なのか。さも当たり前といった様にいくつもの頼み事や不正をサラリと、やってしまうのだから怖い。

この映画に出てくる生徒の親たちは自分の子供の成績が良くなるならばと、先生の頼み事を引き受けてしまう。しかし、皆が逆らえない理由は子供のためでもあるが、先生が共産党員であるからなのだ。
“学校などに対して自己中心的かつ理不尽な要求をする親”であるモンスターペアレントとは違い、まるでモンスターティーチャーなのである。

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【共産主義の闇。歴史的背景】

本作は、共産主義の絶対権威という部分を《学校》という小さな枠組みの中で凝縮して描かれている。

共産主義といえば政治や経済分野での思想や理論、運動、体制のひとつ、財産の一部または全部を共同所有することで平等な社会をめざす事とある。(Wikipedia調べ https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E5%85%B1%E7%94%A3%E4%B8%BB%E7%BE%A9)
主人公の先生は頼み事の際に“女の一人暮らしは何かと大変でしょ?”と同情を引くのだが、共産主義なんだから当然助けるわよね?平等なのよね?と見えない圧力で訴えているように感じた。

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日本ならすぐに、こんな先生は免職されてしまうだろう。

また、ロシア語を学ぶという部分にも旧ソ連による侵攻があった歴史を感じさせる。

【ブラックジョークの数々】

成績が悪い事で両親と喧嘩する生徒も居て、見るに耐えない心苦しい場面もあるのだが、所々クスッと笑ってしまうブラックジョークやユニークでコミカルな場面が満載だ。

シリアスな映画やリアルな実体験ものは苦手という方にも楽しんで見てもらえると思う。

自分の子供が同じ状況に立たされたらどうするのか。自分の子供の担任の先生がこんなモンスターだったらどうするのか。また、選挙権を持つ事になる18歳以上の方にも、共産主義の怖い部分を知っていただく良い機会なのではないかと思う。

学校、家族、世界情勢。
様々な角度から、この映画を味ってみて欲しい。

【執筆者のプロフィール】

黑木未來

●“国際映像製作スタジオ”NOMA(ノマ)所属。Associate Producerを担当。
●Cinema Art Online所属。ライターを担当。
●個人としては、別の活動名でドラマ制作にも挑戦した。

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